UTMBから帰ってきたら北アルプスでも行くかと同級生ラン仲間のテキヤンと約束していましたが、脊柱管狭窄症の神経痛が残っていて近場でお願いすると、大杉谷の提案をいただき、2人で行ってきました。
※大杉谷は今回は2回目ですが、雨上がりの直後の濡れている時と、晴れて乾いている時では、全く難易度が異なると感じました。特に、大台ヶ原から大杉谷方面は下り方向になりますので、濡れている時はかなり滑りやすく危険です。経験のある方と同行することや、時間も長くかかりますし、ぐれぐれも慎重に行動する必要があります。
※途中、鎖のある濡れた岩場をほぼ全員の方がダブルストックで通過されていた団体をみかけましたが、滑りやすい箇所では鎖をしっかり両手で持って三点支持を意識して進む必要のある箇所も多く、後ろから見ていてハラハラしました。ダブルストックで登りの膝への負担を軽減できることは承知しますが、大台ヶ原~堂倉滝を除いては正面を向いてダブルストックをつけるトレイルはほとんどなく、ストックはザックにしまって、できるだけ両手を柔軟に使えることが安全につながる気がしました。せめてシングルストックで片手は自由になるようにした方が良いように感じました。
今回のコース概要
コース地図
毎度、情報量のない地図で申し訳ありませんが、だいたいのイメージで見てください(笑)初日は、大台ヶ原駐車場を朝の8時頃に出発、シシ渕まで行って折り返し、桃ノ木山の家に宿泊しました(午後3時過ぎの到着でした)。2日目は、朝8時頃出発して、午後の2:30頃に駐車場に着いたように思います。
距離・時間など
初日: 2022年9月10日(土) 8:00 駐車場出発、15:15頃山小屋着
距離: 23.7km、時間: 7時間17分
2日目: 9月11日(日) 6:50 山小屋出発、14:30 駐車場着
距離: 20.8km、 時間: 7時間41分
駐車場から堂倉滝まで
まずは日出ヶ岳に向かう
予定通り、午前8時に大台ヶ原の駐車場に降り立ってみると、がっつりハイカー仕様で登山靴・長ズボン・大型リュックのテキヤンと、(走れないくせに一応)トレラン仕様でトレランシューズ・短パン・12Lザックの私の恰好が対照的。「1mmも走らへんからな」というオーラを広げるテキヤン。まぁぼちぼち登り始めます。
この日は、前日の雨が上がり、曇りから徐々に天気回復傾向で、日出ヶ岳周辺は、ガスが一気に晴れていって気持ちのよい朝でした。
山頂で見ているうちに、どんどんガスが晴れていって晴れ間も出ていたことから、これから天気は回復して晴れになるのではという期待をもって、大杉谷に向かいます(結果的には、ずっと曇りという感じでした)。
いざ大杉谷へ(まずは、堂倉滝に向かって)
ここがこの日の最高地点、あとは大杉谷に向かって堂倉滝まで約1200mくらい、ひたすら下り続けます。
堂倉滝までは、階段もかなりあり、一気に標高を下げます。堂倉避難小屋(粟谷小屋)のある林道を渡ってから、堂倉滝までは特に急峻な下りです。前回、私はここで転倒したのですが。今回、雨の後の濡れた路面ではそれなりに注意が必要な個所もありました。
雨の後のせいか、滝の水量は前回よりかなり多く、迫力です。堂倉滝前の岩のベンチで少し休憩し、ここからが危険個所の多い岩場にさしかかるので、気持ちを引き締めて進みます。
実は、堂倉滝への下りで、前回に私が転倒した場所の近くで、今回はテキヤンが足を滑らしてこけてテンション下がり気味なのですが、そのことを悟られまいと元気を振絞って、「いやぁ、見事な滝やなぁ、来てよかったわ」と言っているのが上の写真です。
いよいよ大杉谷核心部へ(光滝経由で崩壊地まで)
光滝まで
堂倉滝を過ぎると、いよいよ、渓谷の滑りやすい岩場のトレイルとなり、大杉谷の核心部に入っていきます。
雨上がりのトレイル、食用ガエル?ガマガエル?、大きいカエルをたくさんみました。保護色的なのでしょうか、場所によって少しずつ色が異なりました。
徐々に危険な岩場に差しかかります。昨日の雨で岩場はどこも濡れていて、かつ、苔が生えていて、とにかく滑りやすい状態。登りはともかく、下りはとにかく注意が必要です。
今回、初めて知ったのですが、テキヤンも高いところは苦手とのこと。釣り橋が怖くて両サイドのワイヤーを持ちながらわたっています。実は私も最初は非常に怖かったのですが、大杉谷はたくさんの釣り橋があり、それ以上に怖い箇所が連発なので、釣り橋を怖がっていられない状態になります。
この辺りから徐々に滑りやすい岩場となるものの、まだ極端に難しいコースではありません。光滝がお近づくにつれ、だんだん、危険個所が増えてきます。
危険個所の1つ、光滝付近。この日は水量も多く水しぶきが霧のように上がるくらい迫力ある状態でした。もともと、水しぶきで虹ができたりするため光滝と呼ばれるとのこと、この日は曇りで虹は見れませんでしたが、迫力は十分でした。写真ポイントは多いのですが、写真を撮るときは、確実なところで立ち止まってスマホを出し、写真を撮り終わったらスマホをしっかりしまってから、歩き出すように注意して進みます。
光滝から崩壊地へ
光滝を過ぎると、少し河原のようなところに降りれます。終始、河と並行して進みますが、水面に触れるくらいまで降りるのは、ここと、シシ渕くらいのように思います。
途中、少し河原に降りる箇所があります。前後が滑りやすく、ちょっとホッとするところです。テキヤンはここで水を補給していました。
光滝を過ぎてしばらく進むと、以前に大きく崩落が起こった崩壊地を通ります。このパートは、アルプスの岩稜を行くような感じで、ここも乾いていると特に難しくないですが、濡れていると慎重に通過する必要がありました。
崩壊地からシシ渕経由、桃ノ木小屋へ
崩壊地と危険箇所の通過
シシ渕までのコースでは、このパートがいちばん気を使いますね。晴れてても日陰部分は濡れて苔が生えていて大変滑りやすく、しかも、滑落するとただではすまないようなコースです。ましては、この日は、前日の雨でほぼ全て濡れていて、とても気を使って進む必要がありました。
崩壊地の後、しばらくは、切り立った岩場の鎖場を進む感じになります。濡れた岩場に、赤黒い苔・カビのようなものが表面についていて、斜めに力をかけるとすぐに滑るやっかいな状態で、鎖をしっかり持ちながら、そっと一歩ずつ3点支持の要領で進みます。
本当に滑りやすい上に、落ちたら骨折ではすまないので、しっかり鎖を持ちながら、まっすぐそっと力を加減しながら歩を進めます。
ところどころ、鎖のある山側に水たまりがあります。できることなら、水たまりには入りたくないですが、鎖から手を放すことや、あまりに谷側ギリギリに足を置くのは、避けたいところです。安全第一で多少の水たまりに入ることも我慢して進みます。
光滝から七ツ釜滝あたりは、ずっと死亡事故発生地区で、気の抜けるところがありません。慎重に進むと、七ツ釜滝に到着。少し木が被って7つは見づらいですが、確かに大きな滝つぼがいくつか見えます。
七ツ釜滝からシシ渕へ
七ツ釜滝を過ぎると、しばらく行くと桃ノ木小屋があります。この日は桃ノ木小屋泊ですが、少し行き過ぎて、シシ渕までピストンで行きたいねとスルーして進みます。桃ノ木小屋を過ぎると、少し通常のトレイルやガレたところがありますが、シシ渕が近づくとまた滑りやすい岩場のトレイルとなります。聞くと、シシ渕あたりが最も滑落事故も多く、8月にも死亡事故が発生しているとのこと、慎重に降ります。
シシ渕から桃ノ木小屋へ
当初は、千尋の滝くらいまで行こうかと話してましたが、予想以上に滑りやすい岩場に苦戦して時間がかかってしまいました。時間と共に、(気を付けて歩くことで気持ち的にも)疲労があり、無理して進んでも事故のリスクもあるし素直に、今日の宿、桃ノ木小屋に折り返して戻ることにします。
とはいえ、シシ渕近くのトレイルは油断ならないトレイル、注意しながら戻ります。
平等嵓は大きな1つの岩からなる山です。嵓とは岩の古語だそうです。写真ではその壮大さは伝わりませんが、その前の釣り橋を渡り、山小屋を目指します。心なしか、テキヤンはガス欠気味と思われ言葉少なです(笑)
小屋の釣り橋が見えると、さっきまで言葉少なだったテキヤンが急に元気になりました(笑) 「とりあえず風呂入って、晩飯までにビール飲もうぜ!」と元気復活しています。15:30くらいだったでしょうか、まだ16:00にならず宿に到着し、ほぼ我々が最初の方の到着のようでした(この後、16:00頃に向け続々と到着されていました)。
桃ノ木小屋で宿泊
部屋の様子、備品販売など
部屋は3人部屋などの個室も選べますが、さほど混んでいるシーズンでもないので大部屋で。紅葉やシャクナゲの季節は、最高に詰めたら片側10、両側で20名くらい泊まれそうですが、この日は我々含め4名で利用でした。
混む前にお風呂をいただくことに。檜風呂ですが、無理に入っても湯舟2名、洗い場2名で満員と思います。(それでもやや詰込み状態で、定員2名くらいです。)紅葉の季節は200名くらいが宿泊するとのこと、本当に汗を流すだけですね。なお、石鹸・シャンプーは使用禁止ですので、お湯で洗い流すだけになります。それでも十分有り難いです。
この日は、家からスコッチをジュースの小瓶に入れて持参(テキヤンのリュックに入れてもらっていたのですが(笑))したのですが、角の小瓶が800円なのでここで買えばよかったと思いました。もちろん下界よりは高いですが、上の写真の通り、携帯の電波も通じないこの山中にあって、この価格は良心的かと思いました。ヘリで荷揚げされてるそうですが、費用もかかるでしょうし、そこから小屋まで運んだりもあるかと思います。
食事(夕食、朝食)など
夕食はとんかつとエビフライがメインで、ごはんの大盛りが選べます。十分ですね、ありがたや~。
夕食、朝食は2交代制でした。受付の時に、夕食、朝食を頼んでいれば、プラスチックの名札を渡されるので、それをもって、正面のフロントに並びます。名札と引き換えにおぼんをいただいて、食堂兼談話スペースに行っていただくスタイルです。込み合う季節は、4交代制などになるそうです。
夕食・朝食込みで10,000円でした、お世話になりました。(実は、二日目のお弁当1,000円をさらにお願いしてました。これは後ほどご報告します。)
復路:大台ヶ原への登り返し
先ずは危険な岩場を戻ります
さて、お世話になった桃ノ木小屋を出発し、昨日来たトレイルを引き返します。この日は、昨日より岩場が乾いている箇所が多かったのと、登り方向になることで、ずいぶんと楽になりました。とはいえ、前半はやはり危険区域ですし、後半は1,200mの激登りです。覚悟して出発します。
同じ桃ノ木小屋を出発したグループが何組かあり、何せ、追い越しポイントは限られるので、お互いに間をあけながら進み、譲っていただいたり、逆に速い方に譲ったりしつつ進みます。
振り返ると、七ツ釜滝の休憩所で先に譲ってもらった団体さんが、遠くの岩場を通過中なのが見えます。七ツ釜滝付近のかなり危険な箇所で、両手に持ったストックと鎖とでバタバタとなっている方も多かったので(ストックはここではしまわれた方がよいかなと、)少し心配だったのですが、それなりのペースで進んでおられるようです。
まぁ、私はというと、人の心配より、しっかり自分が安全に通過できるのでいっぱいいっぱいなんですが。
堂倉滝から大台ヶ原への急登
堂倉滝を通過すると、危険な岩場は減って、逆にがっつりと登り返しの急こう配です。1200mなので、金剛山を登るようなものと思って、淡々と登ります。
シャクナゲ坂、シャクナゲ平など、「シャクナゲ」の名の付く箇所を通過します。正確に、どこがシャクナゲ平だったかわからないくらい、ずーっと、シャクナゲが両脇にあるトレイルでした。春のシャクナゲの季節はたいそう綺麗なんだと思います。(多分、混むんでしょうけど)
大台ヶ原が近づくと、笹と自然林のきれいな景色になります。ここまでくれば、最後の日出ヶ岳の急登を頑張るだけです。もう一息とテキヤンに声をかけながら進みます。
いよいよ、最後の階段です。「前回、階段の段数を数えて1,000段で嫌になって数えるのを止めた」とテキヤンにいうと、かなり覚悟をしていたようで、結果的に、「え、もうついたん?」状態でした。
階段を上ると日出ヶ岳の展望台。桃ノ木小屋で作ってもらったお弁当を戴きます。実は、二人分で2つ用意してもらったのですが、堂倉滝で1つを二人で分け、日出ヶ岳でもう一つを分けて食べた仲良しの同級生です(笑) (ただ、ザックの大きいテキヤンが2つとも運んでくれましたw)
大台ヶ原 遊歩道のハイキング
日出ヶ岳からは、大台ヶ原遊歩道で大蛇嵓を回ることに。コース自体はほぼフラットで、ハイカーさんも多くおられました。ただ、大蛇嵓からの戻りに選んだシオカラ谷吊橋を通るルートは、まぁまぁ、下りと急登があるので、日出ヶ岳経由のコースのピストンが楽かもしれません。
ラクチン木道で正木ヶ原方面に向かいます。ただ、急ぐと、少し濡れている木道は滑りそうで油断禁物です。
お天気は曇りでイマイチですが、それでも正木ヶ原は気持ちよい景色が広がっています。以前より、立ち枯れの気が減ったような気がします。ただの笹林のように感じました。以前は、もう少し多く立ち枯れの木があったように思うのですが。
大蛇嵓、以前に一度だけ来たことはあるのですが、本当にこの先っぽまで来たのは今回が初めてかもしれません。少し写真待ち行列がありましたが、せっかくなので、待って撮っていただきました。
待っている間に、ガスったり、晴れたりで、タイミングによって微妙でしたが、無事撮影を終えて、あとは一路、駐車場に戻るだけ。と思っていたら、シオカラ谷へはまぁまぁのガレた下りで、駐車場にはまぁまぁの急登で、かなり疲れて駐車場に戻りました。
おまけ:秘湯 入之波温泉へ
実は、帰りに入之波温泉によって、さっぱりして帰る予定で、少し急いで駐車場に戻ってきました。入之波温泉は、大台ヶ原駐車場から車で40分くらいでしょうか。16:00まででしたが、駐車場で14:40くらいでしたので間に合いそうです。
15:30頃に入之波温泉に到着、大迫ダムのすぐ横で、車道の下のダムの水面のすぐ近くに温泉があります。入之波温泉は、なんと平安時代に開湯されたそうですが、昭和48年の大迫ダム完成でダム湖に沈んでしまったそうです。その後、ハトの谷をボーリングして源泉を復活させたとのことで、山鳩湯は昭和48年創業だそうです。100%源泉かけ流しです。
写真がないのですが、湯舟は黄褐色の陶器のような、鍾乳石のような色合いなのですが、実はケヤキの丸太だそうです。ただ、析出物がその上に重なり続けてすっかり丸太は見えなくなり、鍾乳石風合いになっているようです。
少し温度は低いですが、その分、ゆっくり長時間入れて、気持ちよい温泉でした。さっぱりして二人で今回の山行を締めくくることができました。
今回も最後までお読みいただきまして、有難うございました。